第22話 「素晴らしいお客様」
トーマス一家がメアリズビルに越してきてから3年目の冬を迎えました。アンは9歳になりましたが、変わらず学校には通えないままでした。お使いに行った町の雑貨屋で、アンは大人たちも分からなかった薬草の効果を教えてあげます。それは以前エッグマンから教わった知識を一つも忘れずにいたためでした。それだけでなく算数も一人で練習していました。アンは想像の中でいつも学校に通っていたのです。でも本当は、アンも想像ではなくホーレスやエドワードのように学校に行きたくてたまりませんでした。大きくなったノアはそんなアンを少しでもお手伝いしようと一生懸命です。まだたどたどしい手つきで洗濯物をしぼろうと頑張るノアに、アンはノアの名前の綴りを教えてあげました。そんな時、ランドルフとミルドレッドがトーマス家を訪ねてきました。二人はこれまでも学校に来れないアンのために本やノートを届けてくれていたのです。でも毎日手伝いで忙しいアンは、中々それを手に取る時間がありません。ランドルフたちから学校のみんなの話を聞かされても、アンは寂しそうに笑うしかできませんでした。夕食の仕度をしながら新しいノートを開いてみたアンは、算数も文法もずっと難しくなってしまったのに驚きます。でも昼間の疲れから、アンは勉強に手を付けられないままいつの間にか眠ってしまうのでした。翌朝学校へ向かうホーレスとエドワードを見送りながら、アンは一人だけ皆から取り残されてしまう気持ちで一杯になってしまいます。ところがアンが切なさに涙ぐんでいると、突然外の道から男の人の大きな声が聞こえてきました。アンが見たのは雪だまりに馬車の車輪がはまり慌てている、見知らぬ男の人の姿でした。