第27話 「あの丘の向こうに」
アンはついに赤ん坊のときから9年を過ごしたトーマス家にさよならを告げ、ハモンドさんの家に引き取られていきました。ハモンド家には、製材所を経営している主人のケンドリック・ハモンドの他に、奥さんのシャーロット、そして双子を含めて6人もの小さな子ども達が暮らしていました。その上シャーロットのお腹には、もう直ぐ生まれそうな赤ちゃんがいたのです。ケンドリックはそんなシャーロットの助けになればと身寄りのないアンを家に連れ帰るのですが、家事と子どもの世話に疲れ果てていたシャーロットは、やせっぽちのアンの姿を見ても、どうせ役にも立たずに孤児院に連れて行く羽目になるのだと不愉快そうな顔をするばかりでした。小さな六人の子どもたちの世話という想像を超えるたいへんな仕事と、冷たいままのシャーロットのまなざしに、アンの心もかたくなに閉ざされてしまいます。仕事を終えようやく通された部屋で、アンは別れてきたトーマス家のことやシャーロットから言われた「どこの誰かもわからないみすぼらしい赤毛の子」と言う言葉を思い、失望と悲しみでいっぱいになりながら必死に涙をこらえるのでした。朝が近づき、悲しさをこらえながらもいつの間にかうとうととしていたアンがふと目を覚ますと、何か苦しそうな声が聞こえてきます。不安になったアンが部屋の外で見つけたのは、階段の下で苦しそうにうずくまるシャーロットの姿でした。驚いたアンはケンドリックを起こしに行きますが、どこにも姿が見えません。迷うアンは、明日の朝訪ねるように言いつかっていた丘の上に住む産婆のミス・ハガティのことを思い出します。アンは怖さを振り切ると、まだ暗く何も見えない夜の道を丘を目指して駆け出していくのでした。