第30話 「そよ風荘の思い出」
アンがハモンド家に来てから1年と3ヶ月がたとうとしていました。アンはこのところ、ケンドリックがたびたび心臓の発作を起こしているのを心配していました。ケンドリックは大人数の家族を養うために、体の調子が悪いのを我慢してこれまで以上に忙しく働いていましたが、アンをも気遣って優しい言葉をかけてきます。でもシャーロットは、アンにもそんなケンドリックにも頑ななままで、ホテルを建てる仕事が成功したら家族で旅行に行こうと楽しそうにケンドリックが話すのを聞いても、冷たく答えを返すだけでした。アンは「守れない約束は失望させられるだけ」とシャーロットがため息をつくのを聞き、それでも楽しい事を想像するだけで心が豊かになるのにと、一人つぶやくのでした。その晩、地下室に本を探しに行ったアンは、誤って棚から小さなペンダントと写真の入った箱を落としてしまいます。その写真には美しい女の人が写っていて、アンがうっとりしながら眺めていると物音に気づいて降りてきたシャーロットに見つかってしまいます。激しい怒りに声を震わるシャーロットに、アンはうなだれ、本を読むために1年も前から地下室に降りていたことを正直に打ち明けました。アンの告白に誤解は解けるものの、シャーロットは地下室のものを見たくないと言い捨て、泣きわめく赤ん坊のところに行ってしまいました。そしてアンは、ケンドリックから写真の美しい女性がシャーロットだということ、どうしてシャーロット今の生活に疲れ絶望しているのかを知るのでした。