「こんにちは アン」の舞台~カナダの歴史・文化

「こんにちは アン」、そして「赤毛のアン」の主人公アン・シャーリーの生まれ育った地・カナダ。
アンの、そして原作者であるルーシー・モード・モンゴメリ(Lucy Maud Montgomery 生没年:1874-1942)の精神を育んできたカナダという国はどんなところなのでしょうか?


国土・自然

日本に比べてずっと歴史の若い国・カナダは、日本の約26倍という世界で2番目に大きな国土を持っています。カナダは、モンゴメリが暮らし、アンが暮らしたプリンス・エドワード島だけでなく、国全体が豊かで美しい自然に囲まれた国です。

カナダの国土の7割は、ツンドラ地帯や山岳地帯をはじめとする広大な未開地で占められています。その広さは南極大陸を除くと世界の原生地域の2割にもあたり、森林の広さも世界全体の10%に相当しています。広い国土には森林や山岳だけでなく世界最大の湿地・ハドソン湾低地もあり、カナダは今も大変豊かな自然に覆われています。ユネスコの世界遺産にも文化遺産5件のほかに自然遺産が6件と多く登録されています。 21世紀を迎え、世界でもトップクラスの環境技術を誇るカナダは、積極的に環境保護に努める事でこれらの大切な財産を次の世代へと引き継いでいこうとしています。



カナダの歴史・人々

カナダは数千年もの長い間、大陸を移動して辿り着いた人々が暮らしてきた土地です。彼ら先住民族は独自の文化を築き、それは今もカナダの地に根付いています。
16世紀頃になってからイギリスやフランスなど、西欧のたくさんの国々の人がカナダに移住してきました。現在のカナダの基になる連邦国家の原型が成立したのは1867年で、その頃日本は明治維新の起こる前年の年でした。イギリスの植民地として築かれてきたカナダは、その後1931年にイギリスから自治権を得、1982年に新しい憲法が制定されました。現在の政治機構は立憲君主制で、イギリス連邦(The Commonwealth of Nations)の一つです。イギリスの女王が同時にカナダの女王でもあり、女王から権限を委任されたカナダ総督が女王の代わりを務めています。

19世紀になってからは欧米だけでなく、アジアや南米、カリブ諸国など世界のあらゆるところから多くの人々がカナダに移り住んで来ました。そのため今では先住民を始め、出身国や民族が異なる人々とその子孫がカナダ国民として協調して暮らしています。このようにそれぞれの伝統や文化を大事にしながら共に助け合い、豊かで厳しい自然とも共生しながら発展しているカナダは、多文化主義の国として知られています。



アンの時代・生活・文化

「こんにちは アン」、そして「赤毛のアン」の舞台である19世紀末~20世紀初頭は、まだまだ人々は大きな自然の流れをあるがままに受け入れながら、時に翻弄され時に打ち勝ち、大地の恵みを授かって慎ましく暮らしていました。りんごの木の下をマシュウとアンが馬車で駆っていたように、自動車もほとんど使われず、生活するための動力自体がほとんど全て機械ではなく人の手によって生み出されていました。

この時代のカナダは、主に欧米から来た人々が故郷の国から持ってきた文化や習慣が中心となって生活が営まれていました。「こんにちは アン」の舞台のノヴァスコシア州、「赤毛のアン」の舞台であるプリンス・エドワード島州には、以前からスコットランド、アイルランドから移住してきた人が多く、今でもケルト文化の片鱗が見られています。
また、北米で発展したキルト(Quilt)は、モンゴメリの生きていた時代のカナダでも大変身近なもので、日々の忙しい家事の合間を縫って家庭の主婦たちが我が家だけのキルトを作るために針を動かしていました。当時モンゴメリが実際に作ったキルトも今でも残っていて、今年初頭に東京で開催されたイベント「東京国際キルトフェスティバル~布と針と糸の祭典2009~」でも会場内で展示されました。



カナダと日本

日本とカナダの交流は古く、2009年は日加修好80周年を迎える記念の年となりました。
1928年に日本はオタワに公使館を開設し、カナダは翌1929年に東京に公使館を開き、両国の正式な交流が開始されました。第二次大戦中は一旦この交流が止まっていましたが、カナダの高名な外交官のハーバート・ノーマンの多大な努力などもあり、1952年のサンフランシスコ講和条約の発効によってカナダと日本の新たな関係が再び始まりました。
現在では、カナダと日本は経済や政治だけでなく、学術研究や音楽・映画などの文化面など、あらゆる分野の人々によって交流が盛んに行われています。例えば、1992年以来、誰もが楽しめる総合パフォーマンスとして世界中で名高いカナダのアート・サーカス「シルク・ドゥ・ソレイユ」が来日し大変な評判を呼んでいます。昨年には東京ディズニー・リゾートに常設劇場が完成し、世界で東京だけでしか見ることができない作品「ZED」が上映されているほどです。もちろん、プリンス・エドワード島を訪れる代表的な観光客は日本人だとまで言われている、日本での「赤毛のアン」の人気の高さは今に至ってもなお続いています。
そして2010年2月12日からは、バンクーバー冬季オリンピックとパラリンピックがカナダで始まりされます。カナダでのオリンピックの3回目の開催となるこの大会に参加すべく、世界各地で、また日本でもアスリートたちの戦いが日々激しく繰り広げられています。開催まで後1年のカウントダウンが始まったバンクーバー冬季オリンピックによって、カナダと日本の交流も今後より一層進む事となるでしょう。



<資料提供:カナダ大使館>